2008年04月03日

ロボット総理「やすおくん」

「このままでは日本がダメになってしまう!」
「人間の総理大臣が役立たずなら、ロボットに総理大臣をやらせてみよう!」
…こうして、世界初のロボット総理、「やすおくん」が誕生した。
以下、TVでの街頭インタビューの様子。
「チンパンジーに似てますね」
「どうせなら中村雅俊そっくりにすべきだったと思う」
「ロボットに政治がわかるわけないですよ」
こうして、日本中の期待を背負って、ロボット総理の「やすおくん」による政権が誕生したのだった。
……数ヶ月後。
やることなすことグダグダで、暫定税率の問題で混乱を招き、中国政府によるチベット大虐殺では「内政干渉はしない」など、日本国内のことは何もしないくせに、なぜか中国にだけは優しいという、意味不明な行動しかしないため、あっというまに廃棄処分が決定した。
そのニュースを伝える、朝のニュース番組での、司会者とコメンテーターのやりとり。
「それにしても、なんでこんなに中国寄りなんでしょうかね?」
「Made in CHINAだからですよ」
「そうなんだ! それじゃ納得だ」
タグ:福田首相
posted by あまのめぐみ at 22:27| 山形 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | ショートストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年12月28日

ケータイの神様

道ばたに空き缶が落ちていた場合、あなたはどうしますか?
拾ってゴミ箱に入れる?
それとも素通り?
落ちているのが携帯電話だったらどうしますか?
携帯だったら、拾って交番に届ける人が多いと思います。
でも、液晶画面が割れていて、本体にヒビが入っているような、どうみても壊れている携帯なら、見なかったことにして素通りする人がほとんどではないでしょうか。
そんな、誰も見向きもしないような携帯が、道路の片隅に落ちていました。
そこは人通りが多く、立ち止まって壊れた携帯を拾うような人は皆無です。
それ以前に、その携帯に目を向ける人すらいないようです。
きっとこのまま、誰にも見向きもされないまま、朽ち果てて行くでしょう。
でも、それでいいのです。
それがその携帯の…おっと、誰かが足を止めました。若い女性のようです。
その女性は、躊躇する事なく、携帯を手に取りました。
すると、ボンッという音がして、携帯は真っ白な煙になってしまいました。
かと思うと、女性の目の前に、いかにも「神様です」という感じの、杖をついた白髪の老人が現れました。
「わしはケータイの神様じゃ」
老人がそう言うと、女性はきょとんとした表情で、老人…神様を見つめています。
神様は意に介する様子もなく、言葉を続けました。
「おぬしは最近の人間にしては珍しく、思いやりの心にあふれておる。電車の中で大声で電話をする奴、車を運転しながらメールを読む奴…そんな身勝手な人間とは違うようじゃ。壊れた携帯に変身して、人間界の様子をうかがっていたが、失望することばかりで、このまま誰もわしを手に取る事がないようなら、世界中の携帯電話を圏外にしてしまおうかと思っていたところじゃった」
「そうですか」
女性は一体何が起こったのかよくわかっていないようですが、とりあえずあいづちをうつことにしたようです。
「おぬしのような人間にぜひ使ってほしいものがある。神のケータイじゃ」
神様は、どこからともなく、金色に光り輝く携帯を取り出して、女性に渡しました。
「これは世界中のどこにいってもアンテナ3本、バッテリーは永遠になくならない、という、まさに神仕様のケータイでのう。大事に使うがよい」
女性は、受け取った携帯を、しばらくのあいだ、色々な角度からながめていましたが、神様に返しました。
「どうしたのじゃ。必要ないというのか? どこが不満なのじゃ?」
女性は、バッグから自分の携帯を取り出しながら、こう言いました。
「だって、ストラップをつける場所、どこにもないなんて、ありえないし」
女性の携帯には、おびただしい数の携帯ストラップやマスコットがついていて、それを見ながらうっとりとした表情を浮かべていました。

おしまい
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2006年10月27日

ケータイはじめて物語

時は戦国時代。
比叡山延暦寺は宇宙人の基地になっていた。
彼らは一見地球に住む人間と変わらないように見えたため、判別するのが難しく、このままでは、日本が宇宙人によって支配されてしまうのではないかという不安をぬぐい去る事が出来なかった。
それに対抗すべく立ち上がったのが織田信長で、日本を宇宙人の魔の手から守るため、信長は延暦寺を焼き打ちした。
その時、明智光秀が戦利品として持ち帰ったのが、二台の携帯電話だった。
光秀のお手柄に信長はたいそう喜び、近江の領地と携帯一台を与えた。これにより、光秀は織田家の家臣として最初の城持ち大名になる。
これが悲劇のはじまりだった。
信長が光秀に電話をかけて、すぐに自分のもとに駆けつけるように言っても、当時一番早い交通手段は馬しかないので、たどり着くまでどうしても時間がかかってしまう。
短気な信長はそれが許せず、他の家臣よりも光秀に対してきつく当たるようになり、その結果、光秀は謀反を起こし信長は自害して果てることになる。本能寺の変はこうして起きたのだった。
その後、光秀の携帯は豊臣秀吉が入手するのだが、信長の携帯は焼失したと思われていたため、使い道がないと思われていた。ところがある日、秀吉の携帯に着信があって、誰かが携帯を所有していることが判明した。
だが、一体誰が所有しているかわからなかったため、秀吉は太閤検地、刀狩りと称して、日本中を探しまわるものの見つからず、朝鮮に出兵してまで探し求めたが、もう一台の携帯の行方はようとして知れなった。
そして無念のうちに秀吉がこの世を去ると、行方不明だった携帯の所在が判明した。
実は徳川家康が隠し持っていた。家康は本能寺の焼け跡から携帯を見つけたが、そのことを隠し、わざと秀吉に電話をかけてその存在を知らせ、秀吉に探させる事で、無駄に兵力を使わせ、自らが天下を取る機会をうかがっていたのだ。
そして関ヶ原の戦いをへて、二台の携帯電話と、天下を自らの手中におさめた家康は、携帯を誰にも見つからないように、とある場所に隠してしまうのだった。
時代にそぐわない技術の存在はいたずらに混乱をまねく、というのが家康の考えで、結果的にそのことが功を奏し、それまで続いていた戦国時代が終焉を迎え、天下泰平の江戸時代が永きにわたって続く事になった。
鎖国をしたのも、隠した携帯が盗まれて、外国に持ち出されたりするのを防ぐためだったと言われている。
それでは、家康が隠したと言われる携帯はその後どうなったのか?
家康が携帯を隠したという話から尾ひれがついて、金塊や金属貨幣が日本のどこかに埋められているという話になっていき、それが今もなお伝えられている。
……いわゆる「徳川埋蔵金」として。
  
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2006年09月30日

つぐない

あの瞬間、私の人生は終わった…。
不意に道路に飛び出してきた子供を跳ね飛ばしてしまったのだ。子供は即死。しかも、その子供は私の一人息子。
こうして私は社会的信用と最愛の息子を同時に失い、後人生のすべてを失う事になった。
だが、一つだけ、私には可能性が残されていた。当時の私は科学者で、タイムマシンの研究をしていた。もしタイムマシンを完成させる事が出来れば、時間をさかのぼって、あの事故を回避することができるはずなのだ。
それから三十年の歳月をかけ、私はタイムマシンを完成させた。これであの時、あの場所に戻り、息子が飛び出ししないようにすれば、未来は変わる。息子の命を救えるのだ。
ただ、この計画にはひとつだけ問題があった。タイムマシンを使って過去を変える事は重大な犯罪で、そのために、時間旅行者に対する監視も厳しい。私が過去の世界で自由に行動できる時間は、わずか1分程度だ。それ以上過去にとどまれば、私の行動は監視され、過去を変えるような行動をとれば、私はもう二度とタイムマシンを使う事ができないだろう。そして、息子を助けることは永遠にかなわなくなる。
そうならないために、私はある計画を立てた。タイムマシン研究の副産物である物質転送装置を使い、息子と私の立ち位置を変える事で、息子の代わりに私が車にひかれるというものだ。これなら、車にひかれて一人の人間が死ぬという、過去が変わることがなく、なおかつ、息子は助かる。
当然私の命は奪われてしまうが、あの瞬間、私の人生は終わったのだから、結局は同じ事だ。私は自らの命をもって、息子に対するつぐないをするのだ。
準備は万端。あとは実際に行動するだけ。私はタイムマシンにのりこむと、三十年前の、あの場所に向かった。
例の道路の近くの公園に到着すると、私は物質転送装置を持って、急いで道路に向かって走った。物質転送装置で人間の立ち位置を入れ替えるには、おたがいの目が合う事が条件だったので、私は息子を見つけると、息子の名前を叫びながら大きく手を振った。
目が合った。その瞬間、息子はこう叫んだ。
「おじいちゃん!」
そう言って道路に走り出した息子の前に、車が現れ、跳ね飛ばした。
私はその時、理解した。
息子があの時飛び出したのは、30歳年をとった私を祖父と勘違いして駆け寄ろうとしたからだということを。
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2006年08月31日

国境警備隊

就職先が決まらないまま大学を卒業した僕が選んだ道は、「傭兵」だった。
自分でも無茶なことだと思ったけど、フリーターもニートも嫌だったし、自分のやりたいことが何かわからなかったから、それなら誰もやらないようなことをやろう、と思い立って傭兵に志願した。
僕が配属されたのは、聞いた事のないような小さな国の国境警備隊で、話によるとその国は、もともと小さい国だったのが、さらに2つに分裂してしまい、生まれた国だとのこと。そういう意味では、僕は最前線に立たされたことになるのだが、実際に行ってみると、そこはのどかな山間の村で、国境を示す物も、立て札が一枚あるだけという、およそ再戦前のイメージとはほど遠い物だった。
さらに、そこの村の人達は、何事もなかったかのように国境を越え、隣の村の人達と普通に交流をしていた。考えてみれば、政府の都合で勝手に分割されただけなのだから、村人にしてみれば、別の国、という意識はないのだろう。
それからの僕は、国境警備隊員として、毎日を畑仕事をして過ごす事になった。隊長が村の農家の人だったから、部下が手伝うのは当然ということらしい。
最初のうちは慣れない農作業にとまどっていたけど、しだいにやり方を覚え、一ヶ月が過ぎる頃には、作物を育てるという喜びに満たされ、意外と農業が合っているんじゃないかとさえ、思うようになっていた。
村人はみんな親切で、特に、近所に住んでいる10歳くらいの少女が僕のことを兄のように慕ってくれて、僕は、このままこの村で一生を終えるのも悪くないかも、なんて考えるときもあり、すっかり村の一員として溶け込んでいた。
3ヶ月くらいたった頃、突然僕は警備隊をクビになり、日本に帰るように命じられた。理由がまったくわからなかったので、僕は隊長に説明を求めたものの、とりつくしまもなく、半ば強制的に日本に帰国させられることになった。
本当に突然のことだったので、お世話になった村の人達や、妹のようにかわいがっていた女の子に挨拶もできず、それがとても心残りだった。
日本に帰ってしばらくのあいだは、燃え尽き症候群とでもいうのだろうか、何もやる気がせず、ぼーっとして過ごす日々が続いた。
ある日、何気なく新聞を読んでいたら、僕がいた国で戦争が始まった、ということが書いてあった。それはとても小さな記事で、日本人からしてみたら、たいした問題ではないということなのだろう。
でも、僕にとっては大事件なので、ネットでこのことについて調べてみたものの、大きく取り上げているところはなかった。
今にして思えば、僕を帰国させたのは、こうなることがわかっていたからそうしたんだと思う。本当なら、国境警備隊として、一番大事な時期だったのに…。
あれはきっと、隊長なりの僕に対しての思いやりだったのだろうと思った。
でも、時間がたつにつれ、隊長の真意は他にあったのではないかと思うようになっていった。
隊長の真意…それは、あの国の現状を、もっと世界の人に知ってもらうこと。そのために僕は生きて日本に帰ってきたんだと思う。
そう気付いたとき、僕はそれまでのやる気のなさが嘘のように、必死になって勉強を始めた。
もう一度、あの国へ行こう。そして、そこで何が起きているか、それを伝えること。それが僕の国境警備隊員としての、最重要任務なのだ。
posted by あまのめぐみ at 20:41| 山形 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | ショートストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年07月30日

ドラマみたいな恋

「このマンガ面白いから読んでみて」
友達にそう言われて読んでみた、一冊の少女マンガ。
内容は、主人公の女の子が、街ですれ違いざまにぶつかった男性と口論になるんだけど、その男性の正体は憧れのアイドルだった…というところからはじまり、そのことがきっかけで彼と会う機会が増え、おたがいに反発しながらも、ひかれあっていき、最後には結ばれる…という、どこかで見たようなラブストーリーだった。
「世の中、そんなにうまくいくわけないじゃん」
というのが私の正直な感想。
数日後、私が一人で街に買い物に出かけた時、両手にレジ袋をかかえた男性が前から歩いてきて、ぶつかりそうだったのでよけたら、同じ方向に男性もよけ、私が袋にぶつかってしまった。
「すみません」
私が謝ると、男性がものすごい剣幕で怒りだした。
「どこ見てんだよ、まったく!」
「ごめんなさい」
私が頭を下げると、男性はしつこく私に対して文句を言い始めた。
悪いのは私なので、ずっと謝っていたものの、あんまりしつこいので、だんだん腹が立ってきて、
「ちょっとぶつかったくらいでそんなに怒らなくてもいいじゃないですか!」
と、強い口調で言ったら、知らない男性が仲裁に入った。
「まあまあ、二人とも、落ち着いて」
見知らぬ男性はそう言うと、私と買い物男を引き離し、私はこういう者です、と私に名刺を差し出した。
そこには、有名な芸能プロダクションの名前が書いてあった。私はびっくりして、買い物男の方を見た。眼鏡をかけていたから気がつかなかったけれど、彼は間違いなく、有名なアイドルグループのメンバーの一人に見える。
「あの、ひょっとして…」
私は急に恥ずかしくなって、買い物男、じゃなくて、アイドルの彼の方をそーっと見やると、「それ見たことか」とでも言いたげに、ふんぞり返ってこちらをにらみつけている姿が目にうつった。
テレビではあんなに愛想良くしてるのに、プライベートではずいぶん態度違うのね…と思っていると、マネージャーだと思われる男性が、「今日のことは秘密にしておいてください」と小声で言ってきたので、ここで文句言ったら、この人があとで困ると思うので、「わかりました」と、おとなしく引き下がる事にした。
すると、アイドルの彼が小さいメモを私に渡した。
「俺も言い過ぎた。悪かったな。何かあったらこれに連絡して」
メモを見ると、そこには携帯のメールアドレスが書いてあった。
これって、もしかして…? 
あのマンガみたいな展開になっていることに気がついた私は、ひょっとして、彼と恋に落ちちゃうの? と思ったけど、さすがにそれはないだろうと思い、平気なふりをして、メモをしまった。
それから家に帰り、やっぱり気になる…と思って、彼にメールしてみることにした。
「さっきはごめんなさい」と書いて、そこから先は何を書いたかよく覚えていない。
すると、すぐに返事が返ってきた。
そこには、こっちも悪かったから、仲直りの意味をこめて、一緒に食事しませんか、というようなことが書いてあって、私はすっかり舞い上がって、めかしこんで出かけた。
待ち合わせ場所に行くと、彼が待っていて、私は夢心地で手をふって走って行った。
「おまたせ」
彼も笑顔で迎えてくれた。
……と、そこで、突然人がたくさん現れた。その中には、テレビ局の人が使うような大型のカメラを構えた人もいる。
「ごめんなさい!」
彼が急に謝りだした。私は一体何が起こったのかわからないでいると、さっきのマネージャーの人が現れて、実はこれはテレビのドッキリ企画で、ドラマみたいなシチュエーションの出会いがあった場合、人はどういう反応をするか、というのを探る企画だったという。
やっぱりドラマやマンガみたいなラブストーリーはないらしい…。
私が思い切り肩を落としていると、アイドルの彼が、こっそり私に何かを手渡して、小さな声で耳打ちした。
「今度はドッキリじゃないから」
そんなこと言われても、信用出来ない! と思いながらも、メモを素早くポケットの中にしまいこむ自分がいた……

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2006年06月26日

前世占い

ある国に、どんな人の前世でも占えるという男がいた。
「シャーリーの前世は、歌手で、戦場に向かう兵士のために歌を歌っていました。兵士はあなたの歌を聴いて、自らの気持ちを鼓舞させていましたようですよ」
「ロビンは農民でした。ごく普通の農家に生まれて、平凡ではありますが、安定した生活を送っていました」
前世のことだから、果たしてそれが本当かどうかはわからない。
それゆえ、インチキだと言う声も多く、人をだまして金儲けするのはやめろ、と嫌がらせを受けることもしばしばだった。
だが、それを上回る数の支持者がいたため、男は占いを続け、それなりに豊かな生活を送っていた。
ある時、男は「どうしてそんなに見えるんですか?」という質問を受けた。
「それはですね、私の中に、自然にそういうイメージが浮かんでくるんです。どうしてそういうことが出来るのか、自分でもよくわからないのですが、きっと、私の前世に関係あるのでしょうね」
男は自分の前世だけは見る事が出来ないため、それだけが口惜しいという。
「私の前世を見る事が出来る占い師がいれば、ぜひ見てもらいたいです」
いつしか男の評判は世界中に広がり、ぜひ一度会って前世を見てみたい、という、女性の占い師が、男のもとにやってきた。
その占い師は、男の姿を見るなり、悲しげな表情を浮かべて、こう言った。
「前世は前世であって、大事なのは自分が今、何を為しているかです。あなたは立派なお方だ。それは前世とは関係ないということを、忘れないように」
占い師の意味深な言葉に、男は動揺を隠せない様子だった。
「それは、私は前世で何か悪い事をしていたとか、そういうことなのでしょうか?」
占い師は首を横に振った。
「それは、あなたが自分の前世というものをどう判断するかによるでしょう」
「そうですか…。私はどんな結果が出ても、そのことと向き合っていくつもりです」
それをきいた占い師は、男の前世について語りはじめた。
「前世では、少年時代に羊飼いをしていました。大変イタズラ好きな少年だったようで、よく、狼が来たと、うそをついて、村人を困らせていたようです。残念ながら、本当に狼が来たときに、村人にそのことを言っても信じてもらえず、自分が狼に食べられてしまいましたが…」
男はその話を聞くと、青ざめた表情で、いずこへかと走り去って行った。
それ以来、男の姿を見た者は誰もいない。
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2006年05月21日

夢オチ。

注)この作品は、「実は夢だった」というオチで終わります。あらかじめご了承ください。

無職にして年収3億の男。
それが夫の肩書き。
結婚する少し前に、生活のたしになればと、軽い気持ちで株を買ったら、これが大当たりで、それに味をしめたのか、会社をやめてまで、株取引に没頭するようになった。
その後も成功をおさめ、結婚する頃には、貯金が1億を超え、そしていまや、年収3億の個人投資家として雑誌にも紹介されたりもしている。
「個人投資家」と言えば聞こえがいいが、定職にもつかず、家の中で毎日パソコンの画面とにらめっこして、株を売ったり買ったりしている姿は「ニート」と大して変わらないようにも見える。
たしかに、お金はあるから生活は楽だし、ずいぶん贅沢もさせてもらっているから、文句は言えない。
でも、それと引き換えに、「楽しい結婚生活」とはほど遠い毎日を過ごしているのも確か。
夫に言わせれば、「株は1秒で1億損することもあるから、一瞬たりとも目が離せない」のだそうだ。
普通の家庭なら一生遊んで暮らせるだけのお金があるんだから、株なんかやめて、夫婦でのんびり旅行にでも行きたいのに、「そのあいだに株価が下がったら大変だから」と言って、家から出ようともしない。
最初の頃ははお金がたくさん入るからいいかな、くらいにしか思っていなかったけど、さすがにこんな生活が一生続くのかと思うと、先行き不安にもなる。
…かといって、離婚して、普通のサラリーマンと再婚、というのも考えられない。
なぜなら人間、一度ぜいたくな暮らしを覚えてしまうと、質素な生活になんか戻れなくなってしまうからだ。
となると、私がやるべきことはひとつしかない。
「夫の暗殺」
無味無臭の毒物である「ヒ素」を、毎日の食事の中に少しづつ混入させ、じわりじわりと殺す。
株は一瞬で相場が上がったり下がったりするけど、私は時間をかけて、じっくりと命の価格を下げる作戦でいく。
そして、夫が亡くなったら、遺産を手に、新しい生活をはじめるのだ。お金があって、愛もある生活を手に入れよう。

「…という夢見たんだけど、お前、そんなこと考えてないよな?」
私は妻にそう言うと、妻は、朝食のしたくをしながら、「さあ、どうかしらね」と、軽くあしらった。
だが、あんな夢を見た後だと、「どうかしら」という言葉の奥に隠された、妻の真意をはかりかねて、疑心暗鬼になる。
「本当は、どこかにヒ素を隠しているんじゃないのか?」
私は気になって、台所にある戸棚を調べ始めた。
すると、妻は私にむかって、冷たい口調でこう言い放った。
「あなた、年収300万のサラリーマンでしょ。年収3億なんて…それはあなたがそうなりたいという、願望が夢に出ただけです!」
posted by あまのめぐみ at 22:11| 山形 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | ショートストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年04月21日

脳みそプリンター

略して脳プリ。
開発のきっかけは、ある作家の言葉だった。
「作品のイメージは頭の中にあるけど、それを文章にするのが大変」
だったら、それを可能にする装置を作ってみようじゃないか。
そうして出来上がったのが「脳みそプリンター」。残念ながら、当初目指していたものとは違う製品になってしまった。
どういう物になったかというと、「えーと、あれ、なんだっけ? わかるんだけど、名前が出てこない…」というときに、脳プリを使うと、イメージしている物がプリントされて出てくるという装置になったのだ。
これはこれで便利なので、発売してみたら、大ヒット商品になった。
誰もが頭の片隅にある、子供の頃の思い出をプリントアウトできる、という内容のCMが功を奏したようだ。
さらに、脳プリをカメラがわりにして、子供の写真を撮る、という親が多数現れた。カメラを向けるのではないから、子供が身構えたりしないので、自然な表情の顔写真が撮れるということで評判になり、新世代のカメラということでも売れだした。
こうして「脳プリ」は一大ブームを巻き起こし、類似商品や、小型化したもの、さらには動画撮影が出来る「脳みそムービー」という新商品まで登場した。
脳プリは21世紀型のカメラとして、定着して行く物と思われたが、あることをきっかけに急に売り上げが伸び悩むようになり、いつしかその存在そのものが否定されるようになってしまった。
その、きっかけとは……
「ちょっと、あなた夕べはどこいってたの? ずいぶん帰りが遅かったじゃない」
「え? たまたま会議が長引いて、遅くなっただけだって」
「じゃあ、そのころ何をしていたか思い出してみて」
「え……えーと」
「ちょっと、何これ!? この女誰よ!!」
記憶をプリント出来る、という特徴を利用して、浮気の証拠写真をつきつけられてしまう人が後を絶たず、さらには「個人情報の漏洩」「プライバシーの侵害」などの理由から、脳プリは法律で使用を禁止されてしまったのだ。
世の中には知らない方が幸せ、ということがたくさんある。
便利になりすぎて、そういう肝心なことが忘れられてしまったようだ。
そのことを忘れないように、脳プリでプリントしておかなくては……
posted by あまのめぐみ at 23:19| 山形 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | ショートストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年04月19日

偉大なおばあちゃん

おばあちゃんが亡くなった。
思えば、とても偉大なおばあちゃんだったと思う。
炊事や洗濯の家事のほとんどをおじいちゃんにやらせて、そのかわり、小遣いと称してお金を渡し、そのお金で女遊びをすることを容認していた。
本人は、楽でいいと言っていたけど、わざわざ自分のお金で女遊びをさせるなんて私には信じられない。
しかも、遺言の中で、おじいちゃんには迷惑かけるけど許してほしい、と書いていて、おじいちゃんのことをとても大切にしていたんだなあって思った。
おじいちゃんはというと、最初はひどく落ち込んだ様子だったけど、四十九日がすぎたとたん、ずいぶん若い女を連れてきて、こいつと再婚する、なんて言いだして、まわりをあきれさせていた。
どう考えても財産目当てなのは明らかで、おじいちゃんは、おばあちゃんのお金で遊んでいたから、お金は相当持っているだろうし、当の本人も、わしが死んだら全財産こいつにやる、とか言ってデレデレしていた。
なんでおばあちゃんは、こんな人を大事にしていたのか、理解できなかったけど、他人にはわからない絆があるのかもしれない。
……そう思っていたら、意外な事実が発覚した。
おじいちゃんがお金を預けていた銀行の貸金庫、調べてみたら、中身は空っぽで、紙切れが一枚残されていた。それにはこう書いてあった。
「おじいちゃんへ。ここにあるお金は、全部あなたの小遣いとして使わせてもらいましたよ」
どうやらおじいちゃんは、おばあちゃんの手のひらの上で踊らされていたようだ。
一見、おじいちゃんに好き勝手やらせているようにみえて、実は面倒な家事をおしつけて、自分はゆっくりしていたということだったのだ。
交際相手の女性も、おじいちゃんにお金がないと知るや、すぐにどっかにいってしまったし。
やっぱりおばあちゃんは偉大だ。

posted by あまのめぐみ at 23:38| 山形 | Comment(0) | TrackBack(0) | ショートストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年03月05日

ブヒブヒ


彼氏と電話するたび、こんなやりとりをしている。
「ねえ、いつも言ってるけど、携帯電話くらい買ったら?」
「欲しいけど、俺のいる部署、研究開発だから、カメラ付き携帯だと持ち込み禁止だから、使えないんだよな」
「それはわかるけど、仕事終わってからメールしたり、電話できるでしょ?」
「でも、会社に泊まり込んで仕事すること多いし、守秘義務あるから、なるべく携帯は持たないようにしてくれって言われてるからなあ…」
「もう! いっつもそう! 守秘義務だかブヒブヒだか知らないけど、そんなにあたしとコミュニケーションとるの面倒なわけ!?」
「そうじゃないって。携帯あっても、なかなか連絡とれないから、それなら最初からないほうがあきらめつくし、つながると思って何度も電話させるのも嫌だし…」
「ああ、そう! もういい! 勝手にすれば!」
ピッ。
最後にはわたしがキレて一方的に電話を切ってしまう。
そして後悔する。なぜなら、彼は携帯電話を持っていないため、いつも公衆電話から私に電話してくるので、謝ろうとしても、こっちから連絡がとれない。
直接会って謝ろうと思っても、彼は遠くに住んでいるから、なかなかそういうわけにもいかないし…。
わたしは看護士で、彼は医薬品メーカーの研究開発員。同じ看護士仲間から紹介されて付き合う事になったんだけど、もともとわたしが不規則な勤務体制の看護士なのと、彼は彼で新薬の開発などでずっと休暇がとれなかったりするものだから、めったに会う事が出来ないし、電話やメールもままならない状態なので、ストレスはたまる一方。
そのことを友達に話すと、それなら無理に付き合わないで、他にいい人探せば? と言われるけど、別れることなんか考えた事もない。
なぜなら、初めて彼を見た時、全身に電流が走って、「この人だ!」って思ったのと、会っている間は本当に自分が自然体でいられて、心が安らぎ、ずっと一緒にいたいって気にさせられるから、他の男性と付き合うなんて考えられない。
…彼もまったく同じ事を言っていた。正式にプロポーズされたわけじゃないけど、それとなく、結婚してほしいとも言ってくれた。もちろんわたしもそのつもり。
だから、携帯のことは気にしないようにしようと思っているけど、彼の声を聞くと、ずっと聞いていたくて、ついわがままになってしまう。
それに、いつも言ってるけど、たまにメールくらい出来るはずだから、携帯を持ってほしいけど、話し合いはいつも平行線をたどったまま。
いつか、ずっと一緒にいられる日はくるのかしら…?
時々そうやって不安になるときもある。
そんな中、足を骨折していてずっと入院していた男性の患者さんが、めでたく退院することになった。
その人は私と同い年ということもあって、時々わたしにちょっかいを出してきていたのだが、退院の日に、まじめな顔で、付き合ってほしいと言われた。
わたしはいつものように軽くいないしていたけど、その人は本気のようで、退院後もたまに病院にやってきては、わたしに声をかけるようになった。
最初はなんとも思っていなかったけど、何度も会いにくるものだから、わたしはちょっとだけ心が揺れるのを感じ始め、このまま押され続けたら…という気持ちが芽生えてきた。
相変わらず彼氏からはめったに連絡がなく、それどころか、だんだん電話がこない期間が長くなっていた。
そのあいだにも、元患者さんの男性のアタックが続き、わたしはとうとう、ある決断をした。
「来週のわたしの誕生日に、彼から何も連絡がなかったら、別れよう」
…誕生日当日。
その日は休みをもらっていたので、私は家で彼からの連絡を待っていた。
すると、宅配便で、彼からプレゼントが届き、喜びいさんで開けてみると、中には携帯電話と手紙が入っていた。
「誕生日おめでとう。僕もやっと自分用の携帯を買いました」
買った…のはいいけど、どうしてわたしに送ってくるのか理解できず首をかしげていたら、その電話に着信があった。「ブヒー、ブヒー」とぶたの鳴き声みたいな着うた? だった。
画面を見ると、公衆電話からで、きっと彼からだと思ってとってみると、
「誕生日おめでとう。電話に出たということは、プレゼント受け取ってくれたんだね」
まぎれもなく、彼氏だった。
「ありがとう…でも、携帯買ったなら、どうして普通にかけてこないで、わざわざ送ってくるの?」
「俺…会社やめたからさ。だから、今からその携帯取りにいくから待ってて」
「え?」
わたしが聞き返そうとしたら、電話が切れた。
それからほどなく、彼がわたしの前に現れ、
「待たせてごめん。これからはずっとそばにいるよ…」
そういって、わたしをぎゅっと抱きしめてくれた。
posted by あまのめぐみ at 20:32| 山形 ☀| Comment(2) | TrackBack(0) | ショートストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年03月01日

未来カルテ

どんな病気でも直す小児科医がいる。
その医者は、患者が未来にどんな人間になるかを調べ、その内容によって治療費を請求するという。
例えば、普通のサラリーマンの子供で、普通の医者なら治療費として100万円かかるような場合でも、その子が未来に世界的な芸術家になると判断したら、10円で治療する、といった具合だ。
だから、ものすごい高額な手術代がかかるような病気の子供や、普通の医者では手に負えないような難病の子供がその医者を訪ねてくることが多いが、ほとんどの場合、ごくわずかな治療費で済むという。
そして今日も、その医者を訪ねてある親子がやってきた。
患者の子供は100万人に1人という病気に冒されていて、このままではあと数ヶ月の命と判断され、しかも現在の医学では治療の手だてがないということから、わずかな希望を求めて、この医者の所へやってきたらしい。
子供の父親は、大企業の社長で、この子の命が助かるなら、1億でも2億でも出すと言った。
医者は、子供の未来が見えるという、「未来カルテ」を見ながら、父親にこういった。
「この子は、将来何人もの人間を殺害して、死刑になる。だから、被害者のためにもこの子のためにも、治療はしない方がいい」
父親は、そんなの信じられない、お金ならあるからとにかく治してくれと言い張った。
「わかりました。それでは、治療費として50億円いただきますが、よろしいですか?」
とんでもない額のお金を要求された父親は、いくらこっちが大企業の社長だからといって、足下を見るのはよせと言ったものの、他の医者では治せない以上、50億の支払いに応じるしかなく、医者の言う事に従うことにした。
果たして、子供の病気は治り、最後には父親も医者に感謝しながら、帰路についた。
医者は、未来カルテを見ながら、だまってそれを資料室の棚にしまった。
カルテにはこう書いてあった。
「患者の子供は20歳の時に、自らの家族を全員殺害して、死刑になる」
posted by あまのめぐみ at 22:31| 山形 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | ショートストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年02月16日

幸せのカタチ

今年の大ヒット商品に「幸せのカタチ」という商品があります。
一見すると、半分に割れたCDのような薄いプラスチックの板で、割れ目の部分を合わせると、ぴったり合わさるようになっています。
もともとは、恋人や夫婦が、おたがいに片割れを持って、ふたつ合わせる事でひとつになる…つまり、二人の愛の証とも言える商品として発売されたもので、割れ目の形が一枚一枚異なるため、なくしたり、捨ててしまった場合、他のもので
ごまかすことが出来ない、というのがポイントになって、ヒットしました。
最初は、ハート型のものしかなかったのですが、しだいにバリエーションが増え、丸や四角、三角といった形の物が発売されました。
また、合コンなどでゲームするときのためにと、あらかじめ5枚がセットになったものもあり、男女に分かれてランダムに配布し、割れ目が合わさった者同士で仲良くする、というような使われ方もしています。
さらに、100枚、200枚セットというものもあり、これを利用したお見合いイベントも開催されています。
大勢の男女の中で、一体誰と誰が合わさるかわからないスリルがあり、見事に割れ目が一致した場合、おたがいに運命を感じることができるというものです。
インターネットの普及で、人と人とのつながりが希薄になっていると言われて久しい昨今ですが、このような単純なアイテムで、他人と直接つながりあえるということが、大ヒットの原因ではないかと、専門家は分析しています。

この「幸せのカタチ」の生みの親に、誕生秘話をうかがうべく、インタビューを申し込んでみました。
「この商品のアイディアは、どういったところから出てきたのでしょうか?」
「…よく女房とケンカをするんですよ。それこそ、ケンカしない日はないんじゃ
ないかってくらいに。…あるとき、彼女が突然、皿を持ってきて、床に落として割ったんです。そして、こう言いました」
『この割れた皿を元通りにすることが出来たら、わたしたちの関係も元通りになれると思うわ』
「それで、元通りにできたんですか?」
「…いえ。私より先に、誰かがこの商品を開発していれば、私たちは離婚しないですんだかもしれませんね」
このインタビューが掲載されることはなかった。
posted by あまのめぐみ at 00:00| 山形 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | ショートストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年01月16日

一万冊の日記

「幸せの日記」という映画があります。
イギリスの田舎の村が舞台で、戦争で焼失してしまった図書館の復興のため、本好きの少女が自分の日記を寄贈するのですが、そのことがきっかけとなって、多くの人々が幸せになっていく、というストーリーです。
この映画は実話を元に作られているということで、私はずっと、映画の舞台になったという図書館に行ってみたいと思っていました。
…あれから幾年たったでしょうか。私はやっと、イギリスに行く事が出来ました。
映画のシーンを思い浮かべながら、自分の日記を携え、映画のモデルになったという図書館にたどり着きました。
喜びいさんで図書館の中に入ると、そこには、数えきれないほどの日記であふれています。
図書館の人に話を聞くと、映画の影響で、日記を寄贈していく人が後を絶たないそうです。今ではその数、1万冊を超えるとか。
一万冊の日記…。さして広くない図書館の中に、これだけ多くの人生が詰まっているのです。
私は本棚から、適当に何冊か手に取って、ぱらぱらとめくってみました。
この人は、どんな思いで日記を寄贈したのだろう…。私はその人の顔も名前も知りません。でも、昔から知り合いのような気もしてきます。
そして私は、一番最初に寄贈されたという、映画の主人公でもある少女の日記を手にしました。
この日記には、注意書きがあり、「この日記にはある秘密が隠されています。それを知ったあなたは、そのことについて一切他言しないでください」と書いてあります。
一体どんな秘密なんだろう…。私はどきどきしながら、日記を開きました。
内容は、少女のごくありふれた日常について書いてあるだけで、どこにも秘密めいたことはありません。映画では、戦争の悲惨さや、平和への思いが綴られていて、それを読んだ人が感動して、自分の日記を寄贈するのですが…。
結局、最後の方まで、普通の日記でしたが、最後のページにこう書かれてありました。
「この日記は幸せの日記です。読んだあなたは、3日以内に日記を寄贈すれば幸せになれます。ですが、寄贈しないと、不幸のどん底に落ちます」
posted by あまのめぐみ at 23:03| 山形 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | ショートストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年12月05日

悪魔の生命保険

ええ、まあ、そういうことでして、我々悪魔の生命保険はですね、人間の保険と違い、掛け金が一切不要なんです。
そのかわり、加入者の方が亡くなられた場合、その魂をいただきますよ、と、そういうことなんですね。
あ、もちろん、死んでからですから、痛いとか苦しいとか、そういうことはありませんよ。
それなら保険の意味ないんじゃないかって? いやいや、今の人間界は少子高齢化が進んでいるじゃないですか。その影響で、悪魔も魂が手に入らなくて四苦八苦してましてね。保険と引き換えに、魂をもらうことを確約してもらうことで、悪魔も安心できるといいましょうか。
そうそう、それで、具体的な保険の内容なんですが、「身代わり保険」と言いまして…例えば、あなたが不慮の事故などで亡くなってしまった場合、少しばかり時間を戻しまして、その人が死んだ時間に、身代わりとなる別の人が亡くなるというものです。
…ええ、残念ながら、誰かが死んでしまう、というのは避けられないんです。その時間に死ぬ、というのは運命で決まっていますから、本来死ぬべきであった人が死なないとなると、つじつまが合わなくなりますからねー。
ん? 誰かを身代わりにしたら、その人にとってトラウマになるんじゃないかって?
あー、そういう心配は無用です。時間を戻した時点で、記憶も巻き戻されていますから、別の誰かが死んだからといって、気に病むようなことにはなりませんよ。
…そうそう、ここだけの話、身代わりになった人の魂はこちらで引き取らせていただきます。なので、保険に入ってもらうのには、悪魔にとってそういうメリットもあるんですよ。ま、悪魔にしかないメリットではありますが。
え? 今まで加入した人はいるのかって? それはございますよ。
その方は実際に交通事故にあわれましてねえ…。
車を運転していたとき、カーブで対向車線をはみ出してきたトラックと正面衝突しまして、即死だったんですが、時間を戻しまして、その方には別の道を通るように仕向けたんです。
そして、身代わりですが、その方が亡くなった時間に、その方が歩行者をはねてしまい…死なせてしまったんですね。これによって、生死のつじつまが合ったわけです。
ちょ、ちょっとお客様、契約はしないって、そんな…。
……何がいけなかったんでしょうねえ。人身事故で刑務所行きになったとはいえ、自分の命が助かったんだから、得したんじゃないかと思うんですが…。
やっぱり悪魔には人間の考えることはよくわかりませんね。ま、自分で悪い事をしておいて「魔がさした」なんて、悪魔のせいにするくらいですから…。
posted by あまのめぐみ at 22:13| 山形 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | ショートストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年11月21日

三種の神器

どんな物でも斬ることができる剣と、どんな攻撃も防ぐことができる盾。
それらを手にしていた王が治める国は、近隣諸国から攻め込まれても、ふたつの神器によってどんな敵をも打ち負かしてしまうため、長きにわたって繁栄と平和が続き、そしてそれは永遠に不変のものと思われていた。
だがしかし、現在の王には大きな悩みがあった。
現在、王には子供が三人いる。双子の男の子と、女の子が一人。
悩みというのは、男の子が双子であるがゆえ、どちらを後継者とすべきか決めかねていて、仮にどちらかを後継者として指名したとしても、そのことが原因で、ケンカになってしまい、国が二つに割れてしまうのではないかという懸念があった。
何せおたがいにライバル意識が強く、いくら王の決めたことだとしても、素直に受け入れるとはとうてい考えられないのだ。
王はある時、そのことを娘にぼやいてしまったことがあった。
「あの二人が協力して国を治めてくれればすべてうまくいくのだが…」
それを聞いた娘は王にある提案をした。
「お父様、それでしたら、私に良い考えがありますわ」
王は娘の考えを聞くと、しばらく考えていたが、最後にはその案を受け入れることにした。
案とは、剣と盾を、双子の兄弟で分け与えるというものだった。剣は兄に、盾は弟に。そして、どんなものでも直せる杖という、第三の神器を娘に与えたのだった。
王は、剣と盾、二つが合わさってはじめて、その真価を発揮するのだから、おたがいに協力して国を治めるように言い、双子は納得して、二人で国を守ると誓ったのだった。
それから月日は流れ、王がこの世を去り、本格的に、双子が新王としてこの国を治めることになった。
最初のうちは、兄弟で協力して、他の国と戦争になっても、団結して戦っていたが、しだいに、手柄はどっちのものかで争うようになり、そして最後には兄弟で戦い、勝った方が王になり、負けた方は処刑される、ということに決まってしまった。
二人の戦いの様子は、公平を期するため、衆人環視の下で行われることになった。
最強の剣を持つ兄と、無敵の盾を持つ弟、はたして本当に強いのはどちらなのか?
…勝負はあっけなく終わった。というのも、おたがいの剣と盾がぶつかりあった瞬間、両方とも粉々に砕け散ってしまったのだ。
そこで、二人は妹の持つなんでも直せる杖で、神器を修復してもらおうとした。
だが、妹は、杖を取り出すと、それをいきなり折ってしまった。
二人が驚いて、妹に問いただすと、妹は毅然とした態度でこう言った。
「なんでも直せる杖、などというものは、最初からこの世に存在しません。あれはただの杖です」
実は二人とも、何でも斬れる剣と、どんな攻撃でも防げる盾をぶつければ、壊れてしまうことくらいわかっていた。
だが、そうなっても、妹の持つなんでも直せる杖さえあれば、問題ないと思っていたのだ。
だまされていたと知った二人は愕然となり、神器がなければ、この国は他国の侵略によって滅ぼされてしまうと嘆いた。
そんな兄たちの姿を見て、妹は諭すようにこう言った。
「お兄様方が争えば、どんなに強力な神器でも、簡単に壊れてしまうもの。でも、二人で協力し合えば、神器よりも強い力を発揮できるはずです。亡くなったお父様の前で誓ったことを忘れたのですか?」
それを聞いた二人は、おたがいの過ちを悔い改め、神器に頼らず、一致協力して国を守ったという。
posted by あまのめぐみ at 23:02| 山形 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | ショートストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年11月06日

はやくなる

上京してからはや二年。
すっかり東京での一人暮らしにも慣れ、田舎のことを思い出すことも少なくなった。
そういえば、おじいちゃんはどうしているだろう。
僕の祖父はいわゆる「町の発明家」で、何やらいくつか特許も取っているらしいけど、それで大もうけしたという話はまったく聞かず、いつも、何に使うのかよくわからない発明品を開発するのに夢中になっていた。
思えば、僕が科学者を志したのも、おじいちゃんの影響が大きい。
東京で暮らすようになってから、一度も実家に帰っていないから、今どうしているのか、すごく気になる。
そんなことを思っていたら、母から電話がかかってきて、祖父が亡くなったと知らされた。
おじいちゃんのことを急に思い出したのは、きっと、虫の知らせか何かだったに違いない。
そんなことを思いながら、僕は実家に戻り、おじいちゃんの葬式に出席した。
そこで僕を待っていたのは、おじいちゃんが遺した発明品の数々だった。
その中に、おじいちゃんが最後に発明したという、「はやくなるシール」というのがあって、それは僕にプレゼントするために発明した物だということで、僕はそのシールを遺品として受け取った。
その後、東京に戻り、「はやくなるシール」を使ってみようと思ったのだが、具体的な使い方に関する説明がまったくなく、何がどう「はやくなる」のか、さっぱりわからなかった。
僕も科学者の卵だから、「わかりません」で終わらせたくなかったので、自分なりに仮説を立てて検証してみることにした。
パソコンに貼った→処理速度の向上は見られない
車に貼った→ガソリンの減るのが早くなった???
亀に貼った→うさぎに勝てない
おでこに貼った→頭の回転は速くならない
という感じで、とにかく思いつくまま試してみたものの、特に目立つ変化はなく、本当はただのシールのような気がしてきた。
そして、いつのまにか、机の引き出しの奥深くに、しまいこんだままになってしまった。
どうやら、本当に単なる「遺品」のようだ。
…ところが、一年くらいしたある日、僕は偶然、このシールの正しい使い方を知った。
この「はやくなるシール」の正しい使い方は…
カップラーメンにお湯をそそぎ、ふたがめくれないように、「はやくなるシール」で止める。
そして、3秒たったら、あら不思議、もう食べられる状態に。
そう、「はやくなるシール」は、カップラーメンがゆであがるのが「はやくなる」シールだったのだ。
posted by あまのめぐみ at 22:54| 山形 ☔| Comment(2) | TrackBack(0) | ショートストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年10月25日

10年の恋

あの日、私は佐藤君に告白した。彼の答えは…10年たって、おたがいにフリーだったらつきあおうというのものだった。
当時、私たちは高校三年生で、彼は大学へ進学のため上京、私は地元の会社に就職が決まっていて、つきあうとしても、遠距離恋愛になるし、彼はどうしてもやりたい仕事があって、恋愛のことは今は考えられない、ということもあり、そういう返事だったのだが、そのときは、10年たってもフリーなんて考えられない、と思いっていて、ふられたんだと思っていた。
ところが、気がついたら10年近くたっていて、その間、彼氏がいないわけではなかったけど、長続きせず、約束の日の時には、完全にフリーだった…。
こうなると、10年前の約束が急に現実味を帯びてきて、もしも、彼がフリーだったら…とあれこれ考えるようになってくる。
とはいえ、彼がその時の約束を覚えているかどうかわからないし、覚えていたとしても、来てくれるかどうかわからない。
でも、可能性があるなら、それに賭けてみたい。
そんな思いを胸に、私は、約束の日、10年前に告白したあの場所に向かった。
驚いたことに、私が行くと、佐藤君がすでに来ていた。うそっ! 信じられない展開!!
彼が来ているということは、きっとフリーで、約束を覚えていた…いや、でも、もしかしたら、ただ単に偶然そこにいるだけかもしれないし、断るためにわざわざ来たのかもしれない。
そんなことを思い始めたら、会うのが怖くなってきた。このまま帰れば、美しい思い出のまま終わる…でも、うまくいく可能性もないわけじゃないし…。
私は思い切って、彼のそばまで走って行った。
「佐藤君!」
彼は、びっくりして私を見たが、すぐに笑顔になってこう言った。
「10年ぶりだね。あの時の約束、覚えていたんだ」
「もちろん! 忘れるわけないじゃない!」
「そうか…実は、約束したのは覚えていたんだけど、何を約束したのか覚えてなくてさあ。とりあえず、来てみたらわかるかなって思って、来たんだけど…どんな理由で約束したんだっけ、俺たち?」
まさか、こういう展開になるとは…。私は思いもよらない結末に愕然としながらも、逆に言えば、これはチャンスだと思い、わざと、実は自分も覚えてなくて、来ればわかると思ってきたのと言ってみた。
私の考えでは、こうして再会したのも運命かもしれないから、付き合ってみない? という方向に話を持って行くつもりだった。
すると彼はこう言った。
「そっか。おたがいに知らないなら仕方ないか…実は、俺、今度結婚することになってさ、こうして昔の同級生に会うのも何かの縁だと思って、招待状もってきたんだ。よかったら出席してくれないかな」

posted by あまのめぐみ at 22:13| 山形 ☀| Comment(2) | TrackBack(0) | ショートストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年10月12日

ネコ型ロボット

ネコ型ロボットの試作品が完成した。
ドラえもんのことではない。本物のネコそっくりのロボットだ。
見た目はアメリカン・ショートヘアーそっくりに仕上げ、見ただけではロボットとはわからないはず。
習性や仕草も本物そっくりにプログラムしてあり、違いといえば、エサを食べないのと、トイレにいかないことだけだ。
早速テストしてみよう。私はネコ型ロボットのスイッチをいれた。
ニャーとなきながら、そこらじゅう歩き回る。完璧だ。誰が見てもロボットに見えない。
しばらく眺めていると、突然外に出て行った。このへんもネコのきまぐれな感じが出ていていい感じだ。
・・・だが、ネコ型ロボットはそれっきり家に帰ってこなかった。
どうやら、気まぐれにしか人になつかないシステムのせいで、私のことを気に入ってもらえなかったのが原因らしい。
posted by あまのめぐみ at 22:04| 山形 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | ショートストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年10月08日

曲がり角

一人息子が就職のため上京したのをきっかけに、妻が車の免許を取ると言いだしたのはいつのことだったか。
私は無理だと思っていたが、妻は言い出したらきかないタイプなので、特に反対することはせず、やりたいようにやらせることにした。
そして妻は、普通の人の三倍も時間をかけて、どうにか仮免許を取得するにいたった。
「路上教習受けられるようになったのよ。まっすぐ走るのは平気だけど、曲がり角が苦手なのよね。特に右折になると、どうしても体がすくんじゃって・・・」
そう言いながら妻は、顔の小じわをとるというクリームを一生懸命顔にぬりたくっていた。妻曰く、教習所の先生の中に、自分好みのいい男がいるのだという。
私は心の中でこうつぶやいた。
(まったく、お肌の曲がり角は簡単に曲がれたというのに・・・)
posted by あまのめぐみ at 23:01| 山形 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | ショートストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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